つれづれ記

2012.5.17.木.

海の森の音楽祭『彩巡る森』特別インタビュー

“nego”や”旅団”、ドラびでおとのユニット”BRICOLAGE”等で活躍する向山聡孝と、”nego”や”L.E.D.” ”あらかじめ決められた恋人たちへ”等のVJも手掛ける映像作家mitchel、そして旅団「Terra Incognita」、「Iyaoi Rhythm」、sgt.「perseption of causality」のアートワークを手掛けたグラフィックデザイナー・イラストレーターazusaの三人で開催し続けている、-物語る映像と即興演奏の祭典-『海の森の音楽祭』
第8回目『彩巡る森』が5月31日に開催される。その魅力を探るべくインタビューを敢行!

―まず「海の森の音楽祭」開催の経緯を教えて頂けますか?

向山:「海の森の音楽祭」は、2008年4月、辻コースケさんの回からスタートしました。

その前に旅団でDUODUOというメンバー同士で即興演奏をするミッドナイトイベントを企画していて、その派生で即興演奏のイベントをバンド名義ではなくソロ名義で開催してみようと思った事、そしてこの三人で一つの作品を作り上げたいという思いがあって立ち上げたイベントが「海の森の音楽祭」になります。

―それぞれの出会いはどういったものでしょうか?

向山:azusaは僕がgasbagというバンドをやっていた時、高円寺のGEARに共通の友人のライブを観に行った時に出会い、 当時彼女がカメラマンのアシスタントをやっているという話を聞いて、gasbagの写真を撮ってもらったり、CDジャケットを作ってもらったりするようになりました。mitchelはバチルス解放区の珠洲の紹介で知り合い、僕のライブ映像を撮ってくれるようになって、その後、僕がsgt.に加入してからもmichelがライブ映像を撮ってくれていて、azusaがsgt.の1st mini album「perception of causality」のジャケットを書いてくれたり、フライヤーを作ってくれたりして、そのあたりからazsaが絵を描き、michelが映像を作るという関係性が徐々に出来てきて。

michel:それから僕が(向山在籍の)旅団でVJをやりたいと思いだして、代官山unitで開催した旅団の2ndアルバムのリリースパーティあたりからVJを始めたんです。

向山:その時のLiveのオープニングでazusaの絵をmichelがVJで動かしたのが今の三人の関係の原型です。

― イベントタイトル、コンセプトについてお聞かせ下さい。

向山:即興演奏の“辺境な雰囲気”というのは一般の人には敷居が高く、来にくい雰囲気があるので、自分の中でかわいらしく親しみやすいイベントタイトルにしたいという希望がありました。

そんな中、僕の音楽のイメージの中に“深海”や“海溝”というのものがあり、即興演奏でもそのイメージを目指していて、そのイメージを言葉にした時、海の中の森なのかなと。

自分の音楽のテーマとして海の森を打ち出した。それが海の森の音楽祭です。

azusa:第一回のサブタイトルと一緒にタイトルを決めたんだったと思う。

「海の底に眠る、たゆたふ森のストーリー 」

あれがコンセプトになっていて、その続編が続いているという感じ。

(絵:たゆたふ森のストーリー)

azusa:最初はざっくりとした色の様なイメージがあって、そこからゲスト陣を決めて、そこからタイトルがしっかり決まり、描く絵も決まり、最後に映像が決まるという流れがあります。

向山:まずテーマ決めがあってそのテーマに沿ってazusaがフライヤーなどのビジュアルを作って、その後に会場に展示する絵を作り、その絵のパーツをデジタルデータでmitchelに送り、そのパーツをmitchelが動かしてライブに投影する、そのようにテーマ・イメージを巡らせて 一つの作品にするのが主旨として固まってきている。

第一回目からだんだんその流れが明確になってきている。

向山:今回の「彩巡る森」は、季節が五月という事と前回まで「深海のすき間」、「インナー・フォレスト」とドープな感じが続いたので、一回深いところから上がって綺麗な色合いで表現してみようかというテーマです。前回が一昨年の九月で、しばらくazusaの産休があったので一年半ぶりの新作です。

―インナーフォレストの絵が胎内のイメージにも思えましたが、ご自身の妊娠や出産という経験が絵にも影響しているのでしょうか?

azusa:まだ描いている途中ですが、そういう感じになるかなと思っています。

そうしようというよりは、そうなりそうかなといった感じ。

前回の絵が外側暗くて内側が明るく、光を内包している感じだったのでその内包していたものが外に出てくるものになりそう。

向山:今まで固まった絵のパーツを動かすだけでVJにはライブ感がそんなになかったのですが、今回はVJにドローイングや即興の絵のビジュアル要素を入れてライブ感を出し、VJの方でも見ごたえの有るものにしたいです。

azusa:VJも絵もその時出来上がるものを入れようかなと考えています。

―VJのドローイングとは具体的にどういったものでしょうか?

mitchel:マーブリングといった手法で、水を張ってそこにインクで模様を描きます。それをビデオカメラで撮って、ビデオミキサーを介して映像と混ぜて、投影するという手法もエッセンスとしていれようと考えています。

―それは他のVJの際にも使用している手法なのでしょうか?

mitchel:この前“あらかじめ決められた恋人たちへ”のリキッドルームのワンマンで一曲だけその手法を取り入れてやったことがあります。その時は、出来上がっている曲に合わせるという形だったんですが、今回即興演奏ということもあり水面の感じも出るので「海の森の音楽祭」のテーマによりマッチするのではないかと思っています。

―mitchelさんは現在、様々なバンドのVJをやっていますが、即興でVJをしているのでしょうか?それともある程度決めてやっているのでしょうか?

mitchel:“nego”に関してはガチガチに決まっているのですが、それ以外の“あらかじめ決められた恋人たちへ”や“L.E.D.”のVJをやる時はまず曲を聴いて、テーマを自分の中で決めて、練習は一切せずに、その場その場の感覚でやっている事が多いです。なので比較的に「海の森の音楽祭」でやっていることに近いのですが「海の森の音楽祭」のVJはazusaさんが描いた海の森の音楽祭用の素材が沢山あってそれを僕のVJの映像と混ぜているので他のVJでやっている時とは全く違う形の映像が出ています。

向山:海の森の音楽祭の素材は他では観られないです。

いつかは映像作品にしたいんですけど。もう少したまってからですね。

映像作品になった時は「海の森の音楽祭」の一つの完結だと思っています。

―今回の演奏者を誘った経緯をお聞かせ下さい

向山:去年くらいから第8回目の話を進めていっている中で、次は絶対梅津さんとやりたいという話をしていて、はじめは梅津さんとデュオを考えていたんですけど、ドラムには川崎さんに入ってもらいたくて、今回初めてゲストとのデュオ無し、トリオ編成のみの長尺セッションをやることを決めました。

対バンのLLamaやtotoさんはお店との話し合いで挙がって、好きなアーティストだったので是非、ということで決まりました。

―梅津和時さん、川崎昭さんとの出会いの話を聞かせてください。

向山:梅津さんの演奏を初めて観たのはかなり前のことですがnestの何かのイベントで、梅津さんが6階のラウンジスペースで吹き語りをしていた時で、とても感動しました。

その後、梅津さんの“KIKIBAND”と横浜の7th Avenueで“旅団”とご一緒させてもらう機会があり、そこで初めてお話させて頂き、いつか是非ご一緒させて欲しいと話をして、ようやく今回実現できました。

川崎さんはもともと僕が“NINE DAYS WONDER”ファンだったので実際出会ったのは10年くらい前です。

仲良くさせてもらっているのはここ最近で、“nego”のイベントに“mouse on the keys”で出てもらった時に、「いつか一緒に何かを作り上げたいね」みたいな話をしていて今回の話に至りました。もちろん川崎さんと梅津さん僕の三人は初演です。

mitchel:どんな感じになるんだろうね?

―イメージはありますか?

向山:ドラム、サックス、ギターの編成は藤原さん芳垣さん僕という編成があったから、音が全く想像できないかというとそうでも無いけど、そのトリオとはそれぞれ全くタイプの違うプレイヤーなので、それがどうなるかっていうのが楽しみです。あまり想像しないようにしています。

―即興演奏をされる際に、この人と演奏をしたら、こんな音が出るだろう等というイメージは事前にあるのでしょうか?

向山:あります。

―それはやはり毎回イメージと違ったものになるのでしょうか?

向山:違ったものになりますね(笑)。イメージ通りにいったのは多分芳垣さんの回ぐらいかな。

イメージ通りにいく事も良い事ですし、イメージ通りにいかない事も発見があり勉強になったなと言えます。

本当に何も決めないでガチンコでやっているので最初の5分~10分はやっぱり会話になって、そこから先は想像して演奏をしたくないし、どうなるのか先が分らないのが好きでやっています。

― LLamaとtotoさんの印象についてお聞かせ下さい。

向山:“LLama”は“nego”のツアーで京都に行った時に“middle9”の紹介で初めて対バンして、吉岡さんの声の印象と柔らかいタッチの演奏で、難しい事をやっていてもスーッと入ってくるイメージ、そして僕の中で森の男たちが演奏をしている印象があって(笑)、いつか企画に誘いたいなと思っていました。

“toto”さんは僕とazusaが“suika”のファンで、今回ラインナップの相談をしている時に“toto”さんのソロはどうですか?と提案頂いた時に凄く「海の森の音楽祭」と合いそうだなと思ったので、実際に出演が決まってとても楽しみです。

― LLamaやtotoさんのVJをするにあたって、即興演奏でのVJをする時と意識の違いはありますか?

mitchel:即興演奏のVJと意識は違うんですけど、やっぱり「海の森の音楽祭」という事なので、「海の森の音楽祭」の世界観は出したいと思っているのですが、彼らは彼らで出したい世界観があると思うので、二つの世界観が融合している感じを表現できるようにVJをします。相見えれば良いんですけど、相見えない可能性もあったりするので一番難しいところでもあります。

―「海の森の音楽祭」では今まで先輩たちと演奏をしていますが同世代の音楽家とは演奏しないのでしょうか?

向山:「海の森の音楽祭」に関しては先輩たちと演奏するというのが一つテーマとしてあります。

「海の森の音楽祭」のスピンオフ的な企画で同世代の気になるギタリスト6人を誘って演奏する「36弦の共鳴」というのもありますが、本編は僕の欲求のまま、先輩と演奏するというものにしています。

―今の段階で今後この人とやりたいというのはありますか?

向山:具体的に考えるのはまず5月成功させてからですが、ピアニストとやりたいという思いはありつつも、ドラマーとの演奏が一番燃えるというのもあります。今のところ楽器でしか考えていないですね。

―即興演奏をやり始めたきっかけって何だったのでしょうか?

向山:ターニングポイントになる大きな出来事は“旅団”で奄美大島の「けんむんマンディ06」に出演した時に辻コースケさん、藤原大輔さん、勝井祐二さん、坂本龍一さんと同じステージに立って、一時間ほど即興演奏をする機会があり、その時に何もできない自分が歯がゆく感じ、そこから即興に対して自分の演奏や世界を確立させたいと思い始めました。

その時の勝井さんの即興演奏は本当に素晴らしくて憧れでした。そこが起点としてあるといっていいと思います。

―これまで、「海の森の音楽祭」以外でも色々な方々と即興演奏をされて来ていますが他にもターニングポイントってありますか?

向山:一楽さん(ドラびでお)と一緒に演奏した時は、今まで見えていなかった部分が見えるようになり一気に世界が広がりました。知識もそうだしアプローチの仕方が今まで観てきた人とは全く違う一楽さんの世界があります。

―過去7回開催してきた「海の森の音楽祭」で特に印象に残っている回はありますか?

mitchel:勝井さんとやった「融解点」。いい意味で緊張感がありました。

あと個人的にはその時に作った火の鳥の映像が演奏とマッチしていました。それまでの「海の森の音楽祭」の映像は比較的おとなしいものが多かったんですが、唯一激しめの映像でそれが演奏とマッチしていたとうのもあって、そういった面でも「融解点」の回が印象に残っています。

(絵:融解点)

azusa:私は芳垣さん出演の「すべてを繋ぐ森」で、「すべてを繋ぐ森」というタイトルも個人的に気に入っているという事と、絵も地味なんだけど表現したかった透明感が出せました。絵で透明感を出す為に塗り重ねる必要があって、なかなか自分の中で止め所が難しい部分があったりするんですが、この回は思っていた透明感が出せました。

(絵:すべてを繋ぐ森)

―海の森の音楽祭のビジュアルイメージは有機的でも無機的でもないものを感じます。

向山:架空のものになっているよね、情景を描いているというよりは架空の空間を描いている。

azusa:絵を描くときに、はじめに決めたテーマやイメージは意識しているんだけど、書いている最中は自分の意識の中では無音になっています。実際に音楽が鳴っていないとかそういう事では無く、音が鳴っていない絵にしたいと思っています。それで当日現場で音が乗っかって初めて絵から音が鳴るようにしたい、なるべく何かのテイストがつかない様にしています。

mitchel:今回は彩巡る森の何かを書くんでしょ?

azusa:そう、彩巡る何か(生き物)を登場させようかなと思っています。

いつもmitchelと映像に関して途中段階の摺り合わせは一切せず、出来上がった作品を渡しています。そしてそれを映像でどう動かして欲しいなどの要望も伝えていないです。

向山:まあ僕は絵を見てこう動かして欲しいとか、この絵をバックに演奏したいとか言っちゃいますけどね(笑)

―そういったやりとりは向山さん、mitchelさんの所属しているnegoでもあるのですか?

向山&mitchel:“nego”はもうガンガンあります(笑)

向山:上がってきた映像にリテイクも出します(笑)

mitchel:こちらもそれを聞いたり、聞かなかったりする。

向山:バンドでやるっていうのは全然違いますね。

mitchel:「海の森の音楽祭」と“nego”におけるトシ君(向山)との関係性で違う事といったら

“nego”の場合は、スタジオに入るのでその時々で詰められるのですが、「海の森の音楽祭」はスタジオにも入らないし、どうなるか分らないという事が前提にあるので、摺り合わせをしても正直意味が無いという部分もあったりするので、「海の森の音楽祭」の時は即興に対応出来るような術を用意していく映像の作り方をしています。

向山:摺り合わせする事によって変に固まって可能性が狭くなってしまうのが一番良くないので。

mitchel:自由度を無くさない様にしています。映像を作って、事前にテストをしない状態で本番に臨んでいます。こういう音が来たらこの映像を出すぞと待ち構えていると、実際に一回もその映像を使わず終わってしまう事があります。

向山:逆に、先に映像を全部使っちゃってあとどうしようという時もあるよね?

mitchel:そうそう(笑) なので“nego”の時の様に映像を作り込むのとは全く違うスタンスで「海の森の音楽祭」はVJをやっています。

―映像を見て演奏しているのでしょうか?

向山:僕は映像を見たり見なかったり。

でも人による様で、外山明さんはずっと映像を見て演奏をしていました。

mitchel:見られていると分りますからね、そんな時は見られている事を意識した映像を出しています。あとはVJをしながら客観的にも観たりもするので、退屈さを感じたら音が変わっていなくても映像だけ変えて遊んでみたりもします。音に反応するというのが基本にありつつ、お客さんの目線になって映像を変えてみる事もあります。

意外と映像って音とずらすと印象が強くなるんですよ、静かな演奏の時に全く突拍子もなく激しい映像を入れるとやっぱり印象が強くなるので、そういう事をたまにしてみています。

azusa:私がちょっと映像変えて欲しいなっていう時はmitchelの顔を見たりします(笑)

mitchel:そうだね(笑) そういうオーラを感じつつやっています。

azusa:一番客観的に観られるという意味では、この三人で当日、一番楽しめているのは私かもしれない。

ライブを観ていて今のタイミングは演奏と映像と展示してある絵がばっちり合ったなあとか一人で思ったりしています。

―今回「杉澤爪具店」が出店で参加されることについてお聞かせ下さい。

mitchel:杉澤爪具店は1つ1つ手書きのネイルチップのお店で、今回コラボレーションという形で、「海の森の音楽祭」にまつわるネイル用の商品を用意してくれています。手にとって身につけれるものとしてお客さんに楽しんでもらえればと思っています。

― 5/31に向けて最後に一言お願いします。

azusa:女性とか、ライブハウスとか来づらいという人に、ライブという感覚ではなく、演劇を観たり、ちょっと人の個展に行くのと同じ感覚で来てみてもらえたら、楽しんでもらえるんじゃないかなと思っています。

mitchel:「海の森の音楽祭」はその日でしか観られないものが凝縮されている一日、即興演奏ってそういうものだけどそれに限らず、絵や映像もその日だけしか観られない物なので是非予定に入れておいて欲しいです。

向山:久々の新作発表という事で、新しい気持ちでアイディアを練っているところです。予備知識は何も必要ありませんので、そんなに構えずにフラッと遊びに来て欲しいです。

ありがとうございました。

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